これら一連のシリーズは、日本の伝統美術工芸の制作過程を忠実に記録したもので、専門家に対する技術資料の提供とともに、一般にも伝統技術の何たるかを興味深く味わわせる意図のもとに制作されたものです。
最良の記録映像を残すため、すべての作品は35ミリ・フィルムを使用しており、映画祭などでも高い評価を得ております。
土屋は、紋紗の経糸に絣を入れることによって多彩な奥行きを秘めた独自の表現を編み出し、平成22年に重要無形文化財「紋紗」の保持者に認定された。
平安時代にはすでに貴族の間で親しまれていたという「紋紗」が、今、土屋順紀の手で時代の新たな感性の息吹を吹き込まれる。古のひとびとが美しいと感じ愛用したものを、自分の手で新しいものにする。
平成12年、重要無形文化財「経錦(たてにしき)」の保持者に認定された北村武資の織物との付き合いは長い。昭和26年、15歳で中学を卒業してすぐ、生活のために西陣で織物の仕事に就いた。経錦は、中国の前漢時代には完成されていた。しかし、経錦は、織り方が複雑で高度な技術を必要とするため、次第に衰退して行った。
千年以上の間、経錦の技法は眠っていた。北村は、それを現代に甦らせた。北村が織る経錦には、古代の織物にある伝統のわざと、現代織物作家の創作の力が、共に織り込まれている。この映画は、新作を織り上げる北村の高度なわざを紹介している。
鍛金技法「木目金」金属を鎚で打ち伸ばし、自由自在に造形する「鍛金」。中でも重要無形文化財 「鍛金」保持者、玉川宣夫が得意とするのが、銀と銅と赤銅による「木目金」の技法である。
紬織は、元来、屑繭を紡いで織る織物であり、養蚕農家などに技術が伝わり、庶民の普段着が織られてきた。平織で素朴な味わいが特徴だったが、近年になり、色彩や意匠の工夫を凝らして織り上げる染色作家が増えてきた。
その一人に志村ふくみ(大正13年-)がいる。植物染料で染めた色糸で、自然の色調を生かす優れた紬織のわざにより、平成2年、重要無形文化財 「紬織」の保持者に認定された。
冬、荒れることが多い佐渡の海。この佐渡の風土から生まれ、風土とともに育った焼き物が、無名異焼(むみょういやき)である。
江戸時代からの窯元を守り続ける五代伊藤赤水(昭和16年~)は、平成15年、重要無形文化財「無名異焼」の保持者に認定された。
代々、佐渡に住む赤水にとって無名異焼の土とわざは、佐渡ヶ島に生きる自らの証しともなっている。
日本人は、木の魂とともに生活してきた。木を刳りぬいた「刳物」は、最も古い木工品である。
ここに、豊かな発想と熟練のわざによって刳物の造形に挑戦し続ける工芸作家がいる。 平成十五年、国の重要無形文化財「木工芸」の保持者に認定された、いわゆる 人間国宝・村山明である。
友禅は、防染糊を効果的に駆使して絵画的に表現する染色技法である。
平成19年に重要無形文化財「友禅」の保持者に認定された森口邦彦は、父である森口華弘のもと伝統的な技法を受け継ぎながらも花や雪、流水等を幾何学文様で構成・表現する作風を確立。その斬新で現代的な造形感覚は友禅の世界に新生面を拓き、その活動振りが、国の内外で高い評価を受けている。
鍛金(たんきん)は、一枚の金属板を鎚で叩いて形を作る。重要無形文化財「鍛金」保持者の田口壽恒は、江戸時代から続く鎚起職人の家に生まれ、職人としての経験を積んだ。素材に朧銀(おぼろぎん)または四分一(しぶいち)と呼ぶ合金を使った田口の作品は、重厚で豊かな量感を持ち装飾を排したシンプルな造形が特徴だ。
彫金は、鏨などの道具を用い、金属の素地を造形・装飾する金属芸術である。平成20年に重要無形文化財「彫金」の保持者に認定された桂盛仁は、伝統的な彫金技法を 駆使した小金具の制作を得意とする。トノサマガエルをモチーフとした帯留金具の制作をデザインの構想から各種鏨を用いた高肉打ち出しと各種象嵌、煮色着色に至る全工程をカメラが捉えた。
京都に生まれた重要無形文化財「木工芸」保持者(人間国宝)の中川清司は、 桶指物を基本とする、杉やさわらなどの軟木を用いる技法を高度に体得しました。柾目の木目を組み合わせる 「柾目合わせ」の技法に高い技量を発揮し、木目が織りなす幾何学的な文様を装飾に生かした作品を制作して います。この映像は、中川氏の細密な木画技法のわざを、製作工程に従って記録し、気品あるれる作品「神代杉木画箱」 が完成するまでを忠実に描いています。
金沢市に工房を持つ三代魚住為楽は、銅鑼づくりで平成14年に重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された。名工と言われた祖父・初代魚住為楽(人間国宝)に高校生の頃から師事し、初代の技術を継承し名品を生み出している。溶けやすく固まりやすいロウを使用する関係上、春と秋、年2回しか制作のチャンスを持てないため、貴重な技術の記録である。
重要無形文化財保持者北村昭斎は、貝を用いて、牡丹唐草文様と花喰鳥を作成し、作品のテーマである「天平の春」を表現する。螺鈿のハイライトである彫りの工程を記録し、北村の貝に対する想いを映し出す。
島根県三隅町。石州の人々は古来、伝統的な技を用いて強靭で光沢のある和紙を漉き続けてきた。楮が重要無形文化財「石州半紙」へと生まれ変わる過程を忠実に記録。
京都西陣、織りの伝統が今も生きるこの街で、重要無形文化財「羅」を保持する北村武資氏。彼が古の「羅」を現代感覚溢れる織物として生み出そうと試みる。図案作りから本織りまでの工程をカメラが追いかける。
重要無形文化財保持者太田儔は、多種多様の剣(漆芸の彫刻刀)を巧みに活かし、自身が考案した「布目彫り蒟醤」の技法で独自の意匠を彫り出してきた。作品「春風」の2年に及ぶ制作過程を記録する。
重要無形文化財「宮古上布」。沖縄県宮古島で発達した芋麻の繊維を糸とする織物の技法を紹介。
重要無形文化財「蒔絵」の保持者寺井直次氏が独特の卵殻の技法で作品「飛翔」を作り上げる過程を忠実に記録。卵殻は、鶉などの卵の殻の美しい部分を選び細かく割り文様にそって貼り付ける技法である。
重要無形文化財「蒔絵」の保持者大場松魚氏の作品「平文、輪彩箱」が完成するまでの過程を克明に記録。平文とは、金、銀の薄板を文様に切り、器物に加飾する方法である。
重要無形文化財「きゅう漆」の保持者増村益城氏の乾漆技術を駆使した作品「乾漆朱輪花盤」の製作過程を詳細に収録。 きゅう漆とは、木や布、和紙に漆を塗ることによって美しくて強靭な器物を生み出す技法である。
重要無形文化財「彫金」の保持者、鹿島一谷氏の作品「朧銀花器流水」の製作過程を通してその技を紹介。図案の絵付け、平象嵌の毛彫り、消込象嵌、研ぎ出し象 嵌、布目象嵌などの技法を解明する。
日本の住居空間の美を表徴する床の間。その床の間と床飾りの歴史的変遷と意義を解説。書斎同心斎(銀閣寺)、勧学院(園城寺)、妙法院、妙喜庵、茶室咄々斎、残月亭、曼珠院などを紹介。
コウゾ厚紙の重要無形文化財「越前奉書」の保持者、岩野市兵衛氏、コウゾ薄紙の「土佐典具帖紙」の浜田幸雄氏の和紙作りの工程と技術を紹介。
重要無形文化財「蒔絵」の保持者、松田権六氏の作品「蒔絵槙に四十雀模様二段卓」の製作過程を忠実に記録。平文、高蒔、らでん、バチル、練り書き、白壇塗りなどの技術を紹介。